DSCF0062(文春新書)

 橋下(新)大阪市長がめざす「大阪都」って何? と話題になりますが、
まず大阪や堺等府内を再編成して東京をモデルに30万人規模の特別区
を10数区つくり、それぞれ選挙で選ばれる区長と議会をおいて、住民自治
を確立することを地域主権の第一歩と考えているのでしょうね。

※ 今府県並みの権限を持つ大阪、京都、横浜など20の「政令指定都市」には地域に区の
  表示が使われていますが「区長」は市役所の職員で、東京23区のように選挙で選ばれ
     ていないこと、議会(区議)がないことが根本的に違い、住民自治は不十分ということに。

 まずは府と市の二重行政を排除すれば、最低限、財政の無駄を省くこと
ができるとしても
彼は大阪府庁から大阪都庁にして特別区を仕切ることを
めざすのではなく、現在のスタイルの都道府県庁はやがて発展的解消と
なることを設計図に描いているのではないでしょうか。
(政令指定都市にとって道府県庁は無用の長物みたいになっていますし)

 で、都構想の先に何を見据えているかといえば、「ヨッロッパの国家規模の
『関西経済圏』で、地方政府は交付金など国の財布に頼ることなく、国からの
権限と財源の移譲を求めた上で地方独自の財布で自活をすること」だろうと
思います。さもなくば世界ダントツの累積財政赤字をもつ日本は(政治経済
ともに親離れ子離れをしない限り)国際競争は勿論、この先もう持たないと・・・。 
(そのことを橋下さんは「権力の再配置」とか「統治機構の変更」と表現して
いますよね)
 
 昨2010年、私が所属する研究機関で全都道府県知事と政令指定都市の
市長に対して「地域主権についての意識調査」をお願いし、ほぼ全員の知事
と市長から回答をいただきました。
回答内容は研究所に著作権があるので、具体的な話はできませんが、
「大阪府知事 橋下徹」の回答は気骨ある筋論として最も優れたものでした。

※(知事と政策企画官僚とのmtgを経て、多くの資料とともに明快な回答を
  出していただいたので、読み終えた時にある種の感動がありました)

 
上記回答、その他を全体的に見て橋下構想の特徴とは(私見を含めて)
①弁護士・政治家の視点だけでなく、数字に強く、ズバリ経営者として数値
 目標を掲げて何よりも財政再建を優先させている。
(大阪府知事の在任中、職員の人件費1割減、無駄な関連法人を4割カット、
 議員定数2割削減などにより、就任2年目(2009年度)で11年ぶりに
 一般会計当初予算を黒字化した。同じ類の国の目標は殆ど未達成ー)
②地域主権の概念に住民自治・住民主権があるとして、住民には
 「地域の意思決定に関して参画だけでなく、「決定と責任」を求めている。
③住民の安心・安全を支える役割を基礎自治体が担い、インフラ整備などの
 成長・競争戦略を広域自治体(大阪都や道州など)が担う。
④今の仕組みでは、地方は補助金や地方交付税など国に頼りすぎており、
 地域が自立していくために「各地域が自分たちで稼ぐ仕組み」に変える必要
 がある。
⑤四国や中国地方も一つになれば経済規模は欧州の一国に匹敵する。

 ⇒何せ、あの北川正恭さん(前三重県知事、現早大教授)が橋下徹さんに
   対して(選挙後)「抜群の政治的センス」と評価しましたね。
   北川先生は(私のゼミの指導者でもあったのですが)常に冷静客観的で
   そう簡単に褒めない人なので<橋下抜群評価>には驚きました(笑い)。

 次の選挙を考え保身に走る政治家だらけ、強いリーダーが不在の日本で
「独裁と言われる程の力」を持ち、「千万人といえども我行かん」の意思で
前進できる人は、(好き嫌いはともあれ)石原慎太郎と橋下徹くらいでしょう
から、橋下さんには先が見えない国の救世主として期待を担ってほしいです。