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   1月19日封切りの映画「東京家族」を翌日に観てきました。
山田洋次監督50周年記念とのことですが、元々は1953年(昭和28年)に
小津安二郎監督によって制作された「東京物語」のリメーク版ですよね。
(さすがの私も戦後間もない作品なので原版は観ていないけど、主役は
笠智衆さんで、あの原節子さんが出演していたという珠玉の名作・・・)

 内容の大筋は同じですが、東日本大震災をからませたり、3人の子ども
の職業や暮らしぶりも平成モデルに入れ替えていますね~
描かれている話はどこにもある家族の日常だけど、かくあるべしの理屈を
超えて人の温かさや、心のすれ違いを繊細にとらえていて、山田洋次さん
の優しい眼に涙が溢れました・・・。
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 東京物語から60年を経ても、老いていく親と暮らしに追われる子どもとの
距離感はそうは変わらないでしょうし、今は更に心の通いにくい時代になって
いるのではと感じますね。
 若くてバリバリと仕事や家事・育児に追われている時は、30歳くらい上回
る親の心情や体力減退や寂寥感は中々想像できにくいものでしょう。
若い頃の私自身にも潜在的に潜んでいたと感じますが、年老いていく年長者
に対する漠然と突き放した思いがあり、「年齢による差別」(エイジズム)が
深層心理にあるのかもしれませんね~
誰しもやがては老いて死んでいくのですが・・・。

 早稲田大学の客員教授でもあった筑紫哲也さんが70歳の定年で退任さ
れた際の最終講義で「定年も年齢による差別ではないか」と冒頭で話しました。
アメリカの大学教授には定年がないのだそうですよ。(最高裁で違法判決)
若かろうが、何歳になろうが、実力を問われる社会だそうで、ここでも日本は
問題意識が欧米に較べると三十年ほど遅れているんですよね~
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 映画の話題でもう一つ思い出しました。
1月15日に亡くなった映画監督の大島 渚さんの告別式で、会葬御礼に
彼のこんなメッセージが披露されたそうです。

「深海に生きる魚族のように、自ら燃えなければ何処にも光はない」と。

ドキリとするような深い言葉ですよね~
日本人の多くは誰かの光をアテにして生きている。それだけならまだしも
自ら光を発信し、船頭となる人には平気な顔をして杭を打つ(苦笑)。

 大島さんは激しく生きて、時にしてウルサイ
人だったでしょうが、こういう
思いで主張し続けていたのかと彼の生き様を理解できたように感じました。

 山田洋次さんとは対照的な視点で時代を描き、切り取った大島渚さん
ですが、山田さんのやさしい眼と、大島さんの激しい眼。
でも、ご両人とも光を探して時代に生きる人間をリアルに表現してきたの
かもしれませんね・・・。