
ドイツ映画の『ハンナ・アーレント」を日本記者クラブの試写会で観ました。
実話に基づく作品で、ハンナ・アーレント(1906ー1975)はドイツ系ユダヤ人。
ナチスによる迫害を逃れて、アメリカに亡命した哲学者であり、政治思想家
の女性です。
話はかなり難解でしたが、居眠りをしている暇はなく、場面の移り変わりを
乗り出して見続けました。(約2時間)
内心では映画はやっぱ織田裕二の「踊る大捜査線」みたいなエンタメが、
お気楽で良いなあ・・なんて思いながらですけどね(笑い)。
主題は、アルゼンチンのブエノスアイレスで潜伏中に捕まった、ナチの高官
アドルフ・アイヒマンに関わる1961年からの公開裁判がエルサレムであった
際に、ハンナ・アーレントが傍聴に出かけ、それを「ザ・ニューヨーカー」に連載
した記事が波紋を広げて激しい攻撃にあった事実を歴史的な背景や私生活
を加えながら映画化したもの。
1963年、著作になり
『イエルサレムのアイヒマンー悪の陳腐さについての報告ー』
彼女の記事の何がバッシングされたのか・・・。
ハンナは政治思想家の立場からアイヒマンに対して、果たしてイスラエルに
裁判権があるのか・・とか、裁判の正当性にも疑問を投げかけた上で、
アイヒマンを法廷で観察し、絶対的な悪(極悪人)ではなく、ごく普通の小心者
でとるに足らない役人としてとらえ、「悪の凡庸さ」という表現で伝えました。
彼女には極悪人でなく、凡庸な小役人が命令とはいえ、あれ程の残虐行為
を指示したことの方が恐ろしい状態なのですが、真意が中々伝わらない。
ハンナはユダヤ人なのに、アイヒマン寄りか、ナチズム擁護か・・・など
ユダヤ人やイスラエルのシオニストに糾弾を浴び、若いころからの親友も
失い、大学からも教授の地位を追われそうになる・・・。
それでも 『アイヒマンを許しているわけではない、彼への非難とユダヤ的な
歴史や伝統の継承は別』・・・と反論をし続けました。凄い勇気・・・。
1975年に69歳で逝去していますが、武士道精神に似たものを感じますね~
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私はハンナの足元にも及ばす、凡庸そのものの存在だけど、でもこういう
類のミニトラブルに遭遇したことは何度もあります。
中々理が伝わらないというか、正論をいうと情緒的に反論されるというか。
ハンナのように最後まで冷静に、しかも譲らない・・・こういう人、今の日本に
は滅多に見当たらないですよね~
ところで、映画の中には中高年の男女の友情が描かれる場面があり、
人生の楽しみ方に日本みたいな制約の空気がなくて、いいな!と感じました。
人と人の交流にボディタッチがあって、日本人からするとストレートに自分を
表現していますしね。
(一般論としてですが) 日本は妻が亭主以外の男性と延々語り合い、お酒を
飲むなんて行動はあまり許されないように思いますが、本当はもっとオープン
な付き合いがあってもいいのではないかしらね。
ただ、若い頃から男女を問わず人脈の輪を広げ、受け身だけでなくまずは
自分がマメに人の役に立とうとすること、連れ合いがいた場合は信頼関係を
築けていることが前提でしょうか・・・。
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映画「アンナ・ハーレント」は
10月26日(土)からロードショーが始まり、岩波ホールです。
TEL 03-3262-5252 特別鑑賞券 1500円。
