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5月3日 憲法記念日
の朝日新聞朝刊


<日本国憲法は不朽の先進性をもっている!> 

 憲法記念日の5月3日、朝日新聞の「日本国憲法 今も最先端」
という見出しが目に飛び込んで、おおっ~という感動を覚えました。
 これはアメリカの法学者たちが世界188ケ国分の成文憲法をデータ
分析したところ、65歳になる日本国憲法が基本的人権の明文化に
おいて、上位19項目※をすべて満たす不朽の先進性をもつとの結果
を公表したとの記事です。

※信教の自由、報道・表現の自由、平等の保障、私有財産権、
 プライバシー権、不当逮捕・拘束の禁止、集会の権利、団結権、
 女性の権利、移動の自由、裁判を受ける権利、拷問の禁止、
 投票権、労働権、教育の権利、違憲立法審査権、身体的権利
 遡及処罰の禁止、生活権

 右に「最古の米国 時代遅れに」と書かれていますが、18世紀の
独立後にジョージ・ワシントン大統領によって制定された米国憲法に
は今も女性の権利、移動の自由、団結権、労働権、教育の権利など
上位19項目中、7つも欠けているのだそうです。これは意外でした・・・。

 分析者の一人、バージニア大学のミラ・バースティーグ准教授は、
(日本国憲法は)「65年も前に画期的な人権の先取りをした、とても
ユニークは憲法」と評価しているそうですが、私たち日本人は自国の
憲法をどれだけ理解し、使いこなしているのでしょうか。
 
 よく「日本の憲法はアメリカの押しつけだから自主憲法に変えるべき」
という議論を耳にしますが、戦後のドサクサの中、つい間際まで軍部が
無謀な戦争を続け、「戦争反対!」なんていえば特高にしょっぴかれ、
「天皇陛下 万歳!」と叫びながら死と正面から向き合っていた日本・・。
 戦争に負けたからといきなり頭を切り替えて「基本的人権」を唱える
民主憲法の制定なんてできる筈がないじゃーないですか?!

(私が知る範囲では、当時のGHQは憲法素案を日本側に求めたが、
お手上げで作成できなかったので、アメリカ側は自分たちが理想とする
人権宣言を盛り込んで作成したと聞いています)
 今の北朝鮮で仮に革命が起きたところで、自力で民主憲法を作成
できるのかを考えれば、理解しやすい話ですよね。

<自民党の憲法改正案、いつか来た道への不安>

 前日の5月2日に、院の同級生で知り合いの参議院議員(自民党)
からメールマガジンが届きました。
 いくつかのニュースの中に「4月27日に日本国憲法改正案を自民党
本部から発表しました」とあります。

 改正点の特徴は4点だそうで、
①天皇を国家元首として位置づける
②自衛隊を国防軍と位置付ける
③東日本大震災の教訓から「緊急事態条項」※を組み込む
 (戦前はこの類が果てしなく拡大解釈されていった
④憲法改正要件を3分の2から過半数へ緩和する
 (各議院ー総議員による改正の発議を容易にする)

 一つづつコメントすることは避けますが「いつか来た道」への回帰
にならなければいいのだが・・・と不安を感じませんか?
 そもそもこの国難の時期に、憲法上の基本理念を守れず、目前
に山積された課題を片付けられない政治のレベルで、国民の信頼
を受けながら65歳に至った普遍性の高い憲法を熟考できる、
高邁な政治家がいるとは思えない・・・。

 
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              2006年2 月23日、
              早大大隈会館にて
              私とおしゃべり中
              のお宝写真です・・
                                    





<筑紫哲也さん「憲法は松明、現実論ではない」>

 今は亡き筑紫哲也さんは2006年3月に、70歳で早稲田の客員教授を
退任されたのですが、1月25日に300人の学部生や院生、教職員を前に
最終講義をされました。題して「多事争論ー学ぶということ」・・・。

 その中で憲法について触れられ、「憲法はやがて大きな政治課題にな
るだろうが、そんなことをやっている暇があるのか、憲法にエネルギーを
注いで大丈夫なのかという危惧をもっています
」と語りました。
(6年度の今は 3.11、原発問題、財政危機が深刻化しているのですから、
筑紫さんが生きてらしたら、どんな話をされるでしょうか・・・)

 
 筑紫さんの憲法論ー話の趣旨は次のようなものでした。

①一般の法律は統治される者(国民)に「これをやってはいけません」と
 取り締まるものだが、憲法は「統治者側ー権力を持つ者ーにやらなくて
 はいけないこと」を定めている。ところが今は国民の義務と責任が足り
 ないからもっと負担させようとの議論が多くなっている。
②憲法は「松明」(たいまつ)だから、こういう国や社会をめざそうという
 理念や理想が必要だが、今は現実に合わないから変えようという、
 現実論が一般的になっている。
③憲法は理想を掲げたものだから、現実とギャップがあるのは当然で
 実現までに時間がかかる。それを現実に合わせようとしたら、もう憲法
 ではなくなる。
我々は憲法をどの程度使いこなしてきたのか? 
 (朝日新聞記者として)ワシントンやニューヨークで何年も仕事をしてき
 たが、アメリカ人はデモが制圧を受けた時でも、逮捕された場合でも、
 「憲法第〇〇条!」(で権利の保障がある)と叫ぶ光景をよく見てきた。
 多くの日本人は具体的に何が何条に書かれているか殆ど知らない。
 ロクに憲法を知らず、自分の血や肉にしていない人たちがどうやって
 新しい憲法をつくるというのか。
⑤今まで自分たちの憲法をないがしろにしてきた国民と政府が、新しい
 憲法をつくればちゃんと守る保証がどこにあるというのか。

 
※④と⑤で、いつか海外の街角で「日本人をどう思うか」のインタビュー
  をした際、「日本人は自国の歴史や文化について質問をしても
  ほとんど答えられないのに、何を知りたくて留学するのか不思議」
  と(その国の人が)回答した話とよく似ていますよね~
  恥ずかしいというより、これは日本人の悪しき国民性・・根幹に関わる
  ことも「どこかで誰かが決めてくれる」の他力本願みたいなものかな。

 ※筑紫哲也さんは、皆さまがテレビでご覧のままの穏やかな人でしたが、
   この最終講義を今読み直してみて、彼にしてはいつもより言葉が 
   激しかったな~と感じます。それだけ危惧感が強かったのでしょうね。

   天国で現状をハラハラと見守っているような気がしてなりません・・・。